都内にある某神社の片隅には、とある石が祀られている。
叶えたい願いを心の中で想いながらその石を持ち上げた時、軽く感じた場合はその願いが叶いやすく、逆に重く感じた場合は叶うにはまだ遠く、さらに努力を重ねるべし、というものだ。
先日、仕事で上司と外出した先で近くにそんな神社があるんだよという話題になり、僕の希望で寄らせてもらう事になった。
上司に何度も確認しながら不慣れな動きで賽銭を投げ入れ、僕はついに件の石の前に立った。
想うことはたくさんあったが、
いざ目の前に立つと更に様々な想いが浮かんだ。それらのほとんどは願望と言うよりも不安と言う言葉で片付けられるものばかりだった。とにかく僕は出来る限り願い達を集約させ、石を持ち上げた。
「どうだった?」
「いやあ、重かったですね」
「そんなもんだ…じゃあ行こうか」
「石、やらなくていいんですか?」
「俺は前にやったからな、いいよ」
「どうだったんですか?」
「とても重かったなぁ」
「じゃあ我々、さらに精進しなきゃあですね」
「そんなもんだ」
互いに苦笑し、僕たちは神社を後にした。所々に並ぶお稲荷様達の表情がまるで笑顔に見えて、僕はすこぶる気分が良かった。
0 件のコメント:
コメントを投稿